世界初、実際に処方された利用患者における降圧効果データを発表
世界初、実際に処方された利用患者における降圧効果データを発表
保険適用の「高血圧症向け治療アプリ」を用いたスマート降圧療法
〜65歳以上の高齢者においても継続可能、12週後の起床時収縮期血圧で-8.8mmHgの降圧を確認〜
株式会社CureApp(本社:東京都中央区 代表取締役社長:佐竹 晃太 以下、当社)は、高血圧症向け治療アプリを用いたスマート降圧療法を利用した患者の降圧効果について、第45回日本高血圧学会総会学会にて発表*1したことを報告いたします。
実際に全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データを解析した結果、全体集団*2における12週後の収縮期血圧の変化は起床時-8.8mmHg・就寝前-8.5mmHgとなり、治験*3で検証されていなかった65歳以上の患者(最高齢87歳)を含む、幅広い患者集団における薬事承認・保険適用を受けた治療アプリを用いたスマート降圧療法の効果が示されました。なお、薬事承認・保険適用を受けた治療アプリを用いたスマート降圧療法の実臨床での降圧データの公開は世界初です。
背景と目的
「高血圧治療ガイドライン2019」において、全ての高血圧患者は生活習慣の修正を行うべきとされている一方で、限られた診療時間の中で個々の患者に合わせた生活習慣指導を行うことは容易ではありません。当社の「高血圧症向け治療アプリ」を用いたスマート降圧療法は、受診時の医師の指導に加えて、院外でも意識・行動変容を促し高血圧患者の正しい生活習慣の獲得をサポートします。治療アプリはこれまで知ることのできなかった院外での患者の治療への取り組みを正確に把握することができるためそのデータに注目が集まっていますが、実地臨床での効果に関する知見はほとんど得られていないのが現状です。
本研究の概要
高血圧症向け治療アプリへの入力データを用いた後方視的研究として、以下の条件で検討を行いました。
適格基準:
- 2022年9月から2023年4月の間にアプリを処方された患者
- 家庭血圧を少なくとも1回入力した患者
- 情報の研究利用を拒否する旨の意思表示を行っていない患者
主要評価項目:
- 高血圧症向け治療アプリ使用開始後12週間での降圧量(ベースラインの週およびアプリ使用開始12週後の週においてそれぞれ5日以上血圧を入力した患者が対象)
- 年齢、アプリ使用開始時点での服薬の有無、塩分チェックシートスコア、BMI (body mass index) での層別解析を実施。
結果として、アプリ使用開始後12週間での降圧量は、全体集団*1において起床時収縮期血圧の変化は-8.8mmHg・就寝前収縮期血圧の変化は-8.5mmHgとなりました。また、治験時は患者集団に含まれていなかった65歳以上の患者も今回の集団では21%を占めており、65歳以上の患者(最高齢87歳)における12週後の起床時収縮期血圧の変化は-11.8mmHg・就寝前収縮期血圧の変化は-10.1mmHgという結果となりました。アプリ使用開始時(ベースライン)の平均収縮期血圧は起床時 133.6 mmHg、就寝前 129.7 mmHg であり、治験時の(国内第III相試験HERB-DH1*3)患者集団で治療アプリを使用した群での値:起床時 149.3 mmHg、就寝前 143.3 mmHg より低い傾向にあったこともわかりました。なお、2023年8月時点で報告対象となる健康被害はありませんでした。
今回の研究により、治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団における 高血圧症向け治療アプリの効果が示されました。今後は、より多くの症例で様々な視点から治療アプリの効果や適切な使用方法を検討するとともに、重要な臨床課題については前向き臨床研究等で検討していく必要があると考えております。
高血圧症向け治療アプリの治験では通院のみの群と通院に治療アプリを追加した2群で血圧値を評価。登録後12週時点におけるアプリを使用した患者の家庭での収縮期血圧において、起床時収縮期血圧は-10.6mmHg、就寝前収縮期血圧は-8.5mmHGで、アプリを利用していない群との群間差は起床時で -4.3 ㎜Hg、就寝時で-3.6㎜Hgあり、この効果は登録後24週まで持続しました。*2本邦の心血管リスクのある患者を対象としたJ-HOP研究*4では、起床時の家庭収縮期血圧は脳卒中の独立した危険因子であるとされており、10 ㎜Hgの増加で脳卒中リスクが36%増加するとされています。治験時での本治療アプリによる起床時の家庭収縮期血圧の約10 ㎜Hgの低下は、心血管疾患を減少させる臨床的意義があると共に今後の高血圧治療における治療方法の選択肢の1つとして有効であることを意味付ける結果となりました。
高血圧症と治療について
現在、高血圧治療における選択肢は、①患者自身での生活習慣改善、②薬物治療に加え、③スマートフォン(保険適用の治療アプリなど)と医師の指導を組み合わせた「スマート降圧療法」などがあります。高血圧は患者数が国内で約4,300万人*5と非常に多く、高血圧に関連する医療費は約1.8兆円*6にものぼります。また高血圧は脳心血管病(脳卒中や心疾患)最大のリスク因子であり、高血圧に起因する脳心血管病死亡者数は年間約10万人*7と推定されています。継続的に治療を受けていると推測される患者数は約1000万人程度*8であり、軽症段階での治療介入は十分ではなく約70%の患者が降圧目標未達成もしくは未治療の現状があります。治療効果の享受は院外・在宅での早期かつ持続的な生活習慣の修正が重要とされていますが、院外患者数が多く未治療の患者が多いこと、また治療を行っている患者でも限られた診察時間内で個別化した生活習慣の修正を医師が直接行うには難しい現状があるとされています。*1高木 雄亮ら, CureApp HT 高血圧治療補助アプリ利用患者のリアルワールドにおける降圧効果,第45回日本高血圧学会総会,LB2-4,2023
*2:ベースラインの週およびアプリ使用開始12週後の週においてそれぞれ5日以上血圧を入力した患者 N=257 (起床時), N=200 (就寝前)
*3Kario K. Nomura A. Satake K. et al. A multicenter clinical trial to assess the efficacy of the digital therapeutics for essential hypertension: Rationale and design of the HERB-DH1 trial. J Clin Hypertens. (Greenwich) 2020;22(9):1713-1722 https://doi.org/10.1111/jch.13993
*4Hoshide S, Yano Y, Haimoto H, et al. Morning and Evening Home Blood Pressure and Risks of Incident Stroke and Coronary Artery Disease in the Japanese General Practice Population: The Japan Morning Surge-Home Blood Pressure Study. J-HOP Study Group.Hypertension. 2016;68:54-61.
*5 高血圧治療ガイドライン2019[JSH2019] 日本高血圧学会(2019) https://www.jpnsh.jp/guideline.htm
*6「国民医療費の概要」平成30年度調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/18/index.html
*7「人口動態統計の概況」令和元年度調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/15_all.pdf
*8 「患者調査」平成29年度調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/05.pdf