信託型SO制度に関する国税庁見解への素早い対応につながった、社員皆が力を最大限発揮できる環境


 

スタートアップ企業など成長段階にある企業などで導入が増えている「ストックオプション(以下、SO)」は、企業が従業員に自社株の購入権利を付与する形態の報酬制度です。SOには様々な種類がありますが、その中でも信託型SOは税率20%の譲渡所得課税の対象となることをはじめその他の運用上のメリットから、導入企業が増えていました。しかし、その一種である信託型SOに対して、2023年8月に国税庁が方針見解を発表、税率最大55%の給与所得とみなされることとなり、企業はその対応に追われることとなりました。


CureAppでも信託型SOを取り入れたインセンティブ制度設計をしていましたが、この国税庁の見解発表後速やかに制度変更の対応を行いました。一体どのような対応を取ったのか、コーポレート本部で経営企画、経理、人事の担当者達に聞いてみました。


プレスリリース:https://cureapp.blogspot.com/2024/02/blog-post.html





<座談会参加者>


  • 久納裕治 コーポレート統括取締役/CFO

早稲田大学商学部卒。公認会計士。

大学在学中に公認会計士2次試験に合格し、新日本監査法人(現:新日本有限責任監査法人)金融部で、証券やVC等を中心に金融機関向け監査に従事。 2010年より、経営コンサルティング、M&A支援を行うフロンティア・マネジメント(株)に参画。国内中堅製造業向けを中心に、事業計画策定や施策の実行支援等、多数のプロジェクトに従事。また顧客企業の経営企画室長も経験。 2018年より、佐竹の目指すビジョンに共感しCureAppに参画、CFOとしてコーポレート業務全般を所管する。


  • 須田龍一郎 FP&A Project Leader / Accounting Project Leader / 経理部長代理

公認会計士2次試験に合格し、あらた監査法人(現:PwC Japan有限責任監査法人)金融部で、アセットマネジメント会社やPEファンド等を中心に金融機関向け監査に従事。 2014年より、PwCアドバイザリー合同会社に転籍し、M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務を推進。2016年より、日本政策投資銀行に出向し、仏のOrano再生案件や日本での1000億円規模の再エネアセットの共同投資案件を推進。2022年より、

CureAppの推進するミッションに共感しCureAppに参画、経営企画部にてFP&Aのプロジェクトリーダー、経理部部長代理として経理部長を兼務し業務に従事する。公認会計士。


  • 菅野華奈 人事業務部 / コーポレート本部

新卒でスターバックスコーヒージャパンに入社し、ストアマネージャーとして店舗運営に携わる。異なる店舗での勤務を通じ、人材開発とマネジメントスキルを磨く。働く人たちの心を豊かで活力あるものにするため、2017年よりCureAppでカウンセラーとして約1年間新規事業に携わったのち、人事として制度運用から組織開発、採用、労務、総務業務に従事。精神保健福祉士、産業カウンセラー。


  • 田中一成 経営企画部 / FP&Aプロジェクト / 資金調達・IPOプロジェクト / サステナビリティ&IMMプロジェクト

早稲田大学政治経済学部卒。

2018年よりリクルートメディカルキャリアに新卒入社。医師の人材紹介事業や医療機関の採用支援事業の事業企画や営業企画を経験したのち、経営企画・事業企画のマネージャーとなり全社計画策定や株主(リクルート)との折衝等を担当。2023年2月よりCureAppに入社し、FP&Aプロジェクト、資金調達・IPOプロジェクト、サステナビリティ&IMMプロジェクトにて業務に従事。2024年1月からは従業員代表も担う。


  • D.K 法務部 / コーポレート本部

社内のあらゆる質問に的確にアドバイスをくれる法務担当者




SO対応方針で大切にしたこと



ーーQ:まずCureAppとして、信託型SOに関する国税庁見解の発表をどのように把握し、どのように対応したかを教えてください。



須田:今回の国税庁の見解発表に関して、正式な発表前から税務専門誌などで把握し、リスク対応として、アドバイザー、監査法人、顧問税理士からも適時情報提供を受けていました。実際の発表後にも既存の信託型SOの活用余地や会計上の取扱い等の情報収集に努め、社内で何度も何が出来るか、出来ないかといった議論を重ねていました。

久納:検討においては株主の皆様にも理解を頂きながら今まで資本政策を構築していること、今まで貢献して頂いている従業員の皆さんとの約束を基礎に出来る限り制度変更の影響を最小化出来ることのバランスを重視しました。


 その上で今回の対応においては、①従業員に不測の事態、過度な税務リスクを負担させないような仕組みとすること、②過去からの一貫性を担保する意味で出来る限り効果が近似する形を目指した発行をすること、の2点を新たな仕組みを作る際にベースとしました。




ーーQ:新たに導入した制度について教えてください。


須田:まず、弊社では税制適格SOに加え、信託型SO2本が運用されていました。その信託型SOも配布前、後とありまた入社時期によってベスティング設定もしており、人によって置かれた状況が異なっていました。なので、改めて今回の見解発表を受け、税制適格SOと有償SOを組み合わせ、更にベスティング期間と行使価額によって合計4種類のSOを発行するという形を取りました。税制適格SOにおける権利行使可能となるまでの2年間の条件等を勘案してのものでしたが、複雑な対応にならざるを得なかったというのが正直な感想です。

 実務としても複雑な面が多くあるので心配でしたが、大きなトラブルなく乗り越えることができたと思います。



SO出し直しの実務上の苦労と乗り越えられた秘訣



ーーQ:対応方針の決定は8月でした。そこから法務としては取締役会・株主総会といった機関手続き、社員との契約などの手続きと相当タイトだったと思いますが、どう感じましたか?


D.K:方針決定が8月だったので9月下旬の株主総会まで短期間でしたし、前例がない中で正直大変でした。元々の権利行使価格よりはるかに低い行使価額で発行することも可能になり、既存株主は想定以上の希薄化を通じて負担が広がる可能性もあったので、既存株主が想定外の負担をしないような形でルールを新たに設計し直し、細かい部分まで踏み込んで誠実に対応したことで機関手続きが順調に進んだのだと考えています。

 また突然の方針変更ということもあり、社員による手続きや、社員からの理解を得ることなども大変でしたが、人事部が社員の質問に対し事細かにしっかり回答を尽くしたこと、優先度を明確にし、業務分担をしっかり進められたことがやり遂げられた秘訣かなと思います。


ーー確かに説明会の際にはVCの方にも、これだけの速さで誠実に対応をしている会社は初めてですと褒めてもらえたことは印象的でしたね。



ーーQ:経営企画として参加された田中さんもSOの議論自体が初めてな中でしっかりキャッチアップし、従業員ごとのあるべき個数の計算などを進めていたと思います。制度理解も、それを反映する複雑なスプレッドシートでの計算も大変だったと思いますが、どう乗り越えたのでしょうか?



田中:SO自体は聞いたことある程度であまり仕組みも理解していなかったのですが、社員の皆さんに教えていただいたり、本で勉強しました。またCureAppが今まで実施してきた制度の経緯を、本と対応させて理解することでより知識も深まり楽しく進めることができました。

 スプレッドシートでの計算も最初は大変でした。ですが、それぞれのSOの違いを意識してスプレッドシートの条件に反映したことで、狙いの通り元々の想定とできる限り近い状態を実現するための計算もできたので、この業務に貢献することができたかなと思います。


ーー確かにCureAppは過去にもルール変更によって資本政策を変化させてきたので、背景を踏まえて理解すると興味深いですよね。経理部の方からもSOに関わるのが初めてなのにフォローアップが素晴らしかったといわれていましたね。


ーーQ:後半は人事のことをお聞きしたいと思います。社員の皆さんへの各種書面への対応、経理も含めた有償SOの入金確認等、時間との戦いもあったと思いますがどうでしたか?



菅野:各対応は大変でしたが、SO関連の対応業務に携わるのは初めてだったので、新しいチャレンジをできることがとても楽しみでもありました。

 見慣れない内容の書類を作り続けた後の、実際に皆さんへご対応いただくフェーズの時は、個別の質問に答える日々でした。何に対して不安を抱いているのかヒアリングをできたことはとても良かったと思いますし、より専門的な質問についてはコーポレート本部の各部署にもサポートしていただけたので、自分の知見も増やしながら1つ1つに寄り添いながら進めることができたと思います。また、産休している方など特殊な環境下にいる方にも最終的にはしっかり理解していただけたかなと思います。 


久納:社員毎の状況に応じた対策立案等、経企・法務だけでは気が回らなかった事項もしっかりケアしていただき、助かりました。全体として最善を目指したとはいえ、細かな対応が大変すぎると思う場面もありました。ただ、CureAppはコーポレート内の部門連携や、会社の雰囲気としてコーポレート機能への協力の姿勢があり、しっかり完了できたのだと思います。しっかり協力してくれるからこそ、多少大変だとしても最善に向けた検討が出来るということかもしれませんね。

 逆にコーポレートの取り組みは社員の視点から、どのように見えていましたか?


ーーインタビューで質問されるのは初めてです。私が抱いた不明点や質問にも丁寧に答えていただいたので、最後は納得して承諾ボタンを押すことができましたね。



今後のコーポレートとしての取り組み姿勢について



ーーQ:SOについて、今後はどのような方針で進めていくつもりでしょうか。


須田:経産省の方はじめ関係者の方々の尽力で制度は大きく変更され、一般的には非常に使い勝手がよくなりました。だからこそ情報収集を続け、既存の社員の方はもちろん、今後新しく参画される方にとっても、この会社での頑張りが良い形で還元されると感じてもらえるように、CureAppの状況に合わせた対応を都度考えていきたいです。

D.K:今回の件では、改めて経営企画・法務・人事・経理とSOはコーポレート機能の掛け算で成り立っていることを強く実感しました。今後も会社の状況に応じて課題も生まれると思いますが、チームワークを忘れることなく、より良い成果を目指して進めていこうと思います。



ーーQ:今回の対応は各社員への応対が多かったと思いますが、今後の業務への思いを教えてください。


菅野:今回は皆さんがコーポレート側に寄り添ってくれたからこそ乗り越えられたのかなと思います。なので、人事としては各部と連携しながら社員の理解をしっかり醸成し、複雑な制度にも誠実に対応することで、効果が最大化出来るように引き続き努めていきたいと思います。


久納:立場や考え方が皆それぞれ違うので、誰から見ても理想の制度を作ることは難しいです。なので、ステークホルダーとの対話とバランスの中で最善を尽くすしかありません。だからこそ最後は、コーポレート機能を果たす側が信頼されているか否かが重要だと思います。今後もスムーズに進められるよう、今まで通り誠実に努めていきたいです。



CureAppコーポレート本部に興味をお持ちの方へ



ーーQ:最後に、まだまだコーポレート機能として拡充をしていく中でメンバーの募集も行っていますよね。どのような方に来てほしいと考えているか?またCureAppのコーポレート本部の良いところを教えてください。



田中:CureAppには、バックグラウンドなど経験豊富な方が多く、さらに常日頃から自分の業務に関することだけでなく自ら進んで学んでいる方もたくさんいて非常に勉強になる環境です。なので、お互いを高めあえる環境に進みたいと考えている人に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

須田:SOは普段の業務で頑張った分が報酬として返ってくるとてもいい施策ですが、CureAppは、全従業員が一丸となって事業に邁進出来る様に、全社員に対してSOの付与を行っている珍しい会社です。全社員がSOをもらえることで同じ目標に向かって全員で取り組むことが、私自身CureAppへの入社を決意した一因でもありますし、モチベーション維持に役立っています。

CureAppのコーポレートは、専門家の方を含めダイバーシティがとれた環境だと思うので、自分の専門性向上に注力することが出来ると思います。周りに頼りになる方が沢山いるので、日々成長できる環境です。なので一緒の目標に向かって努力を続けていける方と共に働けたらいいなと思っています。


D.K:CureAppはチャレンジングな会社ですので、コーポレートに求められる対応も多岐に渡ると思います。だからこそ、今までしてきたことを活かして、自分に何ができるかということをアピールできる人に興味を持ってもらいたいです。

 また、CureAppのコーポレートはメンバーも自分の明確な強みを持つプロフェッショナルが多いことから、チャレンジに対して全力でサポートしてもらえるところが強みでもありますので安心してきて欲しいです。


菅野:皆さんを支えるコーポレートは、社員一人一人が自分の力を最大限発揮できる環境を整えるため当たり前のことを当たり前にやるとともに、常に改善と改革に向き合っています。

医療領域におけるテクノロジーの進化をリードするためには、不確実性やリスクに直面することもありますが、それらを新しい成長の機会としてポジティブに楽しめる方に出会えると嬉しいなと思います。コーポレート本部にとどまらず、CureAppには「愛を持って周囲を豊かに」というバリューの一つを叶える為に、もっと良くするための努力や協力を惜しまない人たちで溢れています。メンバー同士がお互いの強みを理解し合い、より良い成果を生み出すための協力を惜しみなくできる環境だからこそ、働きやすく目標にも向かっていきやすいです。