高血圧対策は減塩だけじゃない! 四季折々の旬の食材を用いた「排塩(はいえん)」で塩分コントロール
脳卒中や心臓病、腎臓病など重大な病気の要因となる高血圧。日本人にとってはとても身近な疾患で、潜在患者を含めるとその数は4,300万人にも上ると言われています。塩分の過剰摂取は最大の生活習慣病リスク要因ですが、世界の国々と比較しても塩分摂取量の多い日本人にとって減塩はとても高いハードルであることも実情です。そこで今回は、摂りすぎてしまった塩分をどうしたら効率的に体外へ排出できるのか?に着目。アメリカで提唱された高血圧患者のための食事療法であるDASH食をベースに、日本の食文化の特徴の一つである四季折々の旬の食材を用いて、『排塩(はいえん)』を意識した高血圧対策をご紹介します。
高血圧を防ぐ食事療法「DASH食」(Dietary Approaches to Stop Hypertension)*¹
DASH食とは、米国立保健研究所などが提唱する高血圧患者のための食事療法のこと。果物、野菜、低脂肪乳製品を豊富に含み、飽和脂肪とコレステロールを減らす食事で、高血圧を予防および管理するための栄養学に基づいたアプローチです。単独の食事成分ではなく、食事パターンが有効な降圧をもたらすことも報告されており、さらに減塩を組み合わせた DASH-sodium食には十分なエビデンスがあります*²。
1.積極的に摂取
2.制限するもの
今が旬!高血圧対策におすすめの春の食材*⁹
豊かな四季がある日本では古来、旬の食材が楽しまれています。旬の食材から、DASH食の観点で積極的に摂取したい成分を取り入れることで、美味しく&楽しく高血圧対策に取り組んでみてはいかがでしょう。
⚠単独の食事成分ではなく食事パターンを意識し、バランスよく摂取することが大切です。腎臓の機能が低下している方は、カリウムの摂取量について医師と相談してください*²。
*1 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482514/
*2高血圧ガイドライン2019 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf
*3 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586583.pdf
*5 http://www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2021/157
*6 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
*7 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21768541/
*8 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/
*9 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-020.html
理想的な健康長寿食:和食
肉類を控え、魚介類や穀物、野菜、果物、豆類等が豊富な食事は高血圧対策に効果があります*¹⁰。一汁三菜が基本の伝統的な和食のスタイルは、これらの食事パターンに近く、理想的な栄養バランスと言われています。さらに減塩と組み合わせることで望ましい食事となり、また「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂を抑えつつ味の満足感も得られ、日本人の長寿や肥満防止に役立っています*¹¹。
平成25年12月には「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録。今では外国人が選ぶ好きな外国料理の第1位が「日本料理」となり、訪日外国人観光客の楽しみは日本の郷土料理を食べることだとか*¹²。世界中から注目されている、日本の誇る食文化を積極的に楽しみながら、前向きに高血圧対策に取り組みましょう!
*¹¹ 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています:農林水産省
*¹² https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/attach/pdf/suishin_kenkyu-16.pdf
監修医師
有馬 久富(ありま ひさとみ)先生
福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 主任教授1993年九州大学医学部卒業。九州大学第二内科へ入局し、久山町研究に従事。
シドニー大学ジョージ国際保健研究所客員研究員、九州大学環境医学分野助教を経て、2008年より再びシドニー大学ジョージ国際保健研究所で講師として2年間、准教授として3年間大規模臨床試験に従事。2014年より2年間、滋賀医科大学アジア疫学研究センターで特任教授として疫学研究に従事後、2016年4月より現職。専門分野は、高血圧・脳卒中の疫学および臨床研究。
※有馬先生への取材をご希望の際はCureApp広報までご連絡をお願いいたします。