夏の正しい血圧コントロールのススメ

記録的な猛暑の今年!血圧の下がり過ぎに要注意!

夏の正しい血圧コントロールのススメ

健康被害も報じられるほどに、記録的な猛暑が続いています。8月にかけてはまだまだ厳しい暑さが続くようです。暑い日にはいつもより特に発汗する機会も、その量も多く、脱水症状や熱中症にも注意が必要です。対策としては、一般的に水分と塩分の補給が推奨されていますが、日頃から減塩を意識する必要のある高血圧の方にもあてはまるのでしょうか?お薬や、日頃の生活習慣においても血圧を上手にコントロールするために気を付けるべきポイントがあります。今回は、夏の正しい血圧コントロールの考え方について解説します。


夏は血圧の下がりすぎに注意!
季節による血圧変動に合わせてお薬のご相談を

暑い夏の時期は、気温が上がることで血管が拡張することや、たくさん汗をかくことにより血管内の水分と塩分を失うため、冬よりも家庭血圧が低くなる傾向があります。またこれによりお薬の反応が増強する場合もあるので、お薬の量を減らしたり、止められる場合もあります。このように、血圧は季節変動することがあり、特にこの時期は服薬状況にも影響をもたらします*¹。衣替えをするように、お薬や日常の対策も見直しをすることが大切ですので、気になることがあればかかりつけ医に相談するようにしましょう。

高血圧の方のための熱中症対策

じっとしていても滝のように汗が流れるこの時期。汗をかくと、塩分やカリウムなどのミネラルが失われます。熱中症対策には、一般的に水分と同時に失われた塩分・ミネラルの補給が推奨されますが、日本人の塩分摂取量は1日に平均10グラム程度と必要量をはるかに超えています。高血圧の方は季節を問わず減塩に努め、1日6グラム未満の塩分摂取を心がけたほうがよいでしょう。ただし猛暑日に屋外で作業したり、運動をするなど、特に多くの発汗を伴う場合はこの限りではありません。水分だけを補給してしまうと血中のナトリウムやカリウムの濃度が低くなる場合もあり、塩分の補給も重要となります。その際、スポーツ飲料等で補給をする場合には、糖分の摂り過ぎにも注意が必要です。また、既に高血圧の薬を服用中の方や、日頃から特に減塩に努めている方は、適切な水分と塩分補給についてかかりつけ医に相談することをおすすめします*²。

暑い日はついつい飲みたくなる・・・アルコールの量にも要注意!

夏はビールなどのアルコールを摂取する機会が多くなりがちですが、夏の飲酒ではまず脱水に注意が必要です。アルコールには利尿作用があり、また、アルコールを分解するためには水分が必要です。夏は発汗も伴うため、更なる脱水状態となり熱中症のリスクが高まります。さらに、飲酒習慣は血圧上昇の原因となります。アルコールを摂取すると血管が拡張し一時的には血圧が下がりますが、適量を超えて飲酒を続けると、次第に血管は収縮し血圧は高くなっていきます。毎日遅くまで飲んでいたり、適量を超えて飲酒をしている人は翌朝から血圧が上がりやすい早朝高血圧になりやすいと言われています。早朝高血圧は朝の起床時に血圧が急上昇するので、脳出血などのリスクも高くなります。高血圧の男性の場合、1日あたりおおよそ日本酒1合・ビール中瓶1本・焼酎半合・ウイスキーダブル1杯・ワイン2杯以下、女性はこの半分以下が推奨されています*¹。普段お酒を飲む方は適量を守りましょう。

高血圧予防に効果的な旬の食材を積極的に摂取しましょう

夏が旬の食材には、塩分を排出する排塩(はいえん)や、降圧に効果的なミネラルが多く含まれているものが豊富にあります。ぜひ積極的に摂取して美味しく減塩対策を楽しみましょう。

熱中症警戒アラートやクーリングシェルターを上手に活用しましょう

今は一年のうちで最も暑く体にとって大変過酷な季節です。高血圧対策の基本である毎日の血圧測定に加え、規則正しい生活習慣を心がけ、少しでも体調で気になることがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。また、適度な運動はとても大切ですが、この時期の屋外での運動は熱中症などのリスクも高まるため、充分な注意が必要です。環境省では、熱中症警戒アラートを配信中です。個人でメールやLINE等で受信することができますので、暑さから身を守るために是非役立てましょう*⁶。また、各市町村には、誰でも休息ができる指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)が設置してあります。各市町村のホームページに掲載されているので、外出の際にはチェックしておくこともおすすめです。
*1 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf
*2 https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
*3 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586583.pdf
*4 Mechanisms Involved in the Relationship between Low Calcium Intake and High Blood PressureCecilia Villa-Etchegoyen,Mercedes Lombarte, Natalia Matamoros, José M. Belizán, and Gabriela Cormick
*5 http://www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2021/157
*6 https://www.wbgt.env.go.jp/


【監修医師】 有馬 久富(ありま ひさとみ)先生

福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 主任教授

1993年九州大学医学部卒業。九州大学第二内科へ入局し、久山町研究に従事。
シドニー大学ジョージ国際保健研究所客員研究員、九州大学環境医学分野助教を経て、2008年より再びシドニー大学ジョージ国際保健研究所で講師として2年間、准教授として3年間大規模臨床試験に従事。
2014年より2年間、滋賀医科大学アジア疫学研究センターで特任教授として疫学研究に従事後、2016年4月より現職。専門分野は、高血圧・脳卒中の疫学および臨床研究。

※有馬先生への取材をご希望の際はCureApp広報までご連絡をお願いいたします。