朝晩の気温差、抑えきれない食欲・・・ 秋は血圧上昇のリスクが多い季節!? これから気をつけたい秋の高血圧対策を解説


頬を伝う秋風(触覚)、味わい深い旬の食材(味覚)、目にも鮮やかな紅葉(視覚)、金木犀の香り(嗅覚)、かすかに耳に届く虫の声(聴覚)。暑さも和らぎ、一年のうちでも過ごしやすく、五感全てで楽しめる季節、秋を迎えました。四季のうち、特に秋だけ“〇〇の秋”と言われるのは、“暑すぎず寒すぎず何をするにもちょうどよいから”と言われています。一方で、朝晩が涼しくなる秋は高血圧の方にとっては気を付けなければならない季節です。気温が下がることで血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。今回は、高血圧の方も気持ちよく秋を楽しむためのポイントを解説いたします。

食欲の秋:食べすぎには気を付けましょう

穀物や果物などたくさんの美味しい食べ物が収穫期を迎える実りの秋。この頃になると動物たちは冬眠を前にたくさん食べ物を摂取することで脂肪を蓄えますが、人間も寒くなると体温を保とうとして基礎代謝が上がり、食欲が増します。暑さも和らぎ、待ちに待った秋の味覚を思う存分楽しみたいところですが、食べすぎには注意しなければなりません。食べすぎによる身体への悪影響と言えば、肥満、胃痛、胃もたれ、胸やけのほか、コレステロールや血糖値の上昇等が挙げられますが、実は知らず知らずのうちに高血圧の大敵である塩分を多く摂取してしまうことにもつながります。食べすぎに気を配りながら、バランスよく楽しむことを心がけてください。秋の味覚の中でも、里芋やさつまいもなどのイモ類、キノコ類、リンゴなどには血圧を安定させる効果のあるカリウムや食物繊維*¹が豊富です。適量を美味しくいただきましょう。

スポーツの秋:1日30分以上の運動を

気温が下がることで過ごしやすくなり、屋外での運動も一層楽しくなる時期。高血圧対策には運動もたいへん重要です。高血圧などの生活習慣病の予防や治療には、速歩やステップ運動、スロージョギング、ランニングのような有酸素運動が推奨されています。“ややきつい”と感じる強度を毎日30分続けるようにしましょう。身体を動かすことは血圧低下のみならず、体重や体脂肪管理、糖尿病やメンタルヘルス不調の予防、認知症予防など、様々な疾患に効果的であることがわかっています。まだ運動の習慣のない方は、これを機に運動を日常に取り入れてみましょう。世界保健機関(WHO)は身体活動不足を全世界の死亡に対する第4位(6%)の危険因子と位置づけています*²。日本では、厚労省より「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が勧告されています。日頃の身体活動の目安の参考にしてみるのもよいでしょう*³。
※個人差がありますので、運動量はかかりつけ医に相談して決めましょう。

読書の秋:リラックスして過ごしましょう

『秋の日のつるべ落とし』と言われるように、急に日が短くなりました。秋の夜長といえば、ゆったりとしたリラックスタイムではないでしょうか。ストレスは高血圧にとって大敵です。ストレスによって高血圧の発症が2倍以上に高まることがわかっています*²。冷え込みには充分気を付けつつ、爽やかな秋の夜風に当たりながら、お気に入りの場所でお気に入りの本をのんびりと読むのもいいかもしれません。積極的にリラックスする時間を取るようにしましょう。

寒冷対策も始めましょう

四季のある日本では、季節の変わり目には寒暖差や気圧変動で体調を崩す方も少なくありません。これからの季節はどんどん日も短くなり、気温も下がり、朝晩の冷え込みも一層感じられるようになります(図1)*⁴。高血圧の方や血圧変動の大きい方は、家の中での気温差にも注意が必要です。日本では、トイレや浴室・脱衣所などに暖房がない場合が多く、寒い場所に移動することで血圧が急激に上がるリスクがあります。冬に向けて、暖房を設置するなどの対策をしておくのもおすすめです。また、朝起きてリビングに移動する際や、冷えやすいトイレや浴室に行く時などのために、さっと羽織れるものを準備しておくのもよいでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586583.pdf
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
*⁴気象庁ホームページより


【監修医師】

有馬 久富(ありま ひさとみ)先生


福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 主任教授
1993年九州大学医学部卒業。九州大学第二内科へ入局し、久山町研究に従事。
シドニー大学ジョージ国際保健研究所客員研究員、九州大学環境医学分野助教を経て、2008年より再びシドニー大学ジョージ国際保健研究所で講師として2年間、准教授として3年間大規模臨床試験に従事。
2014年より2年間、滋賀医科大学アジア疫学研究センターで特任教授として疫学研究に従事後、2016年4月より現職。専門分野は、高血圧・脳卒中の疫学および臨床研究。

※有馬先生への取材をご希望の際はCureApp広報までご連絡をお願いいたします。