11/10~11/16はアルコール関連問題啓発週間 <安全で健康的な飲酒習慣を考える>
11/10~11/16はアルコール関連問題啓発週間
<安全で健康的な飲酒習慣を考える>
CureApp宋医師が安全で健康的な飲酒のコツについて解説
アルコール関連問題啓発週間(11/10〜11/16)が今年も始まります※1。この啓発週間は、2014年に施行されたアルコール健康障害対策基本法に基づいて実施されており、アルコールによる健康リスクや社会的影響についての理解を深めるための重要な機会です。この機会に、飲酒の影響を再確認し、健康的なライフスタイルを促進するために自身の飲酒習慣を見直してはいかがでしょうか。
そこで今回は、株式会社CureAppで減酒治療アプリ※2の開発を担当する宋医師が、現在の国内での飲酒状況およびアルコールが影響する健康問題について解説すると共に、安全で健康的な飲酒習慣を築くためのコツをお伝えします。
現在の国内の飲酒実態-男性の2割以上において飲酒問題が疑われる-
AUDIT※3はWHOにより開発された問題飲酒者のスクリーニングテストで、多くの国々で飲酒問題の早期発見、早期介入のツールとして使われております。「飲酒実態やアルコール依存に関する意識調査」※4によると、AUDITの得点8点以上の飲酒問題が疑われる者の調査対象者全体に占める割合は男性23.1%、女性6.5%となっています。さらに、15点以上のアルコール依存症が疑われる者の割合は男性9.2%、女性2.1%でした。アルコールが影響を与える障害は200種類以上
アルコールは、適量であればリラックス効果をもたらす一方で、過剰な摂取はさまざまな健康リスクを伴います。短期的な影響としては、判断力の低下や反応速度の遅れ、記憶障害などが含まれ、これが交通事故や暴力事件、転倒事故の原因となることがあります。また、短時間に多量飲酒することによって急性アルコール中毒を引き起こし、命を脅かすこともあります。さらに、長期的な飲酒習慣により、アルコール性肝障害、心血管疾患、がん、うつ病やアルコール依存症の発症など問題は多岐にわたり、世界保健機関(WHO)は、200種類以上の障害(疾患だけではなく傷害、感染症などを含む)と関連していると報告しています※5。知っておこう、飲酒の〇✖
飲酒による様々なリスクを避けるためにはいくつかコツがありますので、今年度のアルコール関連問題啓発ポスターに沿ってご紹介します。1.あらかじめ飲む量を決める…〇
あらかじめ自ら飲む量を決めることで、過度な飲酒を避けることができると言われています。なお、お酒の飲み方を自分で決められないコントロール障害は依存症の症状の一つであり、注意する必要があります。
2.一時多量飲酒…✖
1回の飲酒機会で多量にアルコールを摂取することは様々なリスクに繋がります。交通事故、転倒などによる怪我、心血管疾患の発症にも関連しています。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」によると、1回の純アルコール摂取量が60g*以上となる場合を一時多量飲酒とし、避けるべきとしています。純アルコール量60gとは、アルコール度数5%の缶ビール500mlで3本程度、同15%の日本酒で3合程度です。
*純アルコール量(g)=飲む量(ml)×アルコール度数×0.8
3.1週間の内、飲まない日を設ける…〇
毎日飲むのはアルコール依存症による離脱症状が出ているからかもしれません。離脱症状にはよく知られている手の震え以外に、頭痛、吐き気、不安、苛立ち、不眠などもあります。2日連続して飲まずにいられるか試してみてください。
4.他人への飲酒の強要…✖
飲酒の強要、イッキ飲ませなどのアルコール・ハラスメントは命を奪うことがあると認識しましょう。アルコールを分解する酵素の強弱は遺伝で決まり、個人の体質は様々です。飲める人も、飲めない人や飲まない人もそれぞれの体質、事情に合わせた飲み方を各自が選択するように意識しましょう。
5.飲酒前、飲酒中に水分や食事を摂る…〇
食事を先に摂ると飲酒量が減ることが分かっています。飲酒欲求の引き金の頭文字をまと
めたHALTのHはHungry(空腹)です。ちなみにH以外はAngry(怒り)、Lonely(孤独)、Tired(
疲れ)です。また、飲酒の合間に水分を摂取することにより、血中のアルコール濃度を上がりにくくし、アルコールをゆっくり吸収、分解できるようにする効果があります。
6.不安や不眠を解消するための飲酒…✖
不安や不眠を解消するためのお酒は量が増えていきやすく、むしろ問題が悪化する可能性があります。お酒で解決しようとするのではなく、医療機関に相談することが大切です。
飲酒問題で悩んだら…ぜひ早めの相談を!
この啓発週間をきっかけに、あなた自身や大切な人のために飲酒習慣を見直してみましょう。現在の飲酒量でどのくらいの純アルコール量を飲んだか、どのくらいでアルコールが抜けるのかアルコールウォッチ※7で計算してみてください。まずは現状を把握したうえで、飲酒量を少しずつ減らす「減酒」に取り組むことをおすすめします。自身で飲酒量をコントロールすることが難しいと感じていたら、深刻化する前に専門家に相談することが大切です。アルコールに関する問題は、治療は早ければ早いほど、健康への影響を最小限にし、それだけ早く回復します。アルコール依存症の治療は従来「断酒」が基本でしたが、現在は選択肢が広がり、軽症の方を対象に「減酒」治療が広がっています。飲酒量低減薬の服薬や、減酒外来での治療など様々な選択肢が増えています。ご自身が飲酒問題で悩んでいたり、家族や友人に心配な方がいたら、是非専門家に相談してください。
※1:アル法ネット(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク)https://alhonet.jp/enlightenment.html
※2:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000173.000015777.html
※3:久里浜医療センターHP https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/audit.html
※4:松下幸生、 遠山朋海,古賀佳樹,新田千枝,柴崎萌未,伊東寛哲,木村充; 令和4年度 依存症に関する調査研究事業「飲酒実態やアルコール依存に関する意識調査」、 2024年.
※5:WHO Global status report on alcohol and health 2018https://iris.who.int/handle/10665/274603
※6:厚生労働省 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
※7:厚生労働省 あなたの飲酒を見守る アルコールウォッチ https://izonsho.mhlw.go.jp/alcoholwacth/
<解説>
宋 龍平
株式会社CureApp / 岡山県精神科医療センター 医師東京医科歯科大学 精神行動医科学 非常勤講師
京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康増進・行動学分野 研究協力員
長年、アルコール依存症に精神科医として向き合う中で、早期治療普及の重要性を痛感し、CureAppで減酒治療アプリプロジェクトを立ち上げた。最前線の診療現場に立ちながら、研究にも精力的に取り組み、日本アルコール・アディクション医学会を始め、複数の学会で受賞歴がある。
研究実績はこちら https://researchmap.jp/rso。
※取材をご希望の際はCureApp広報までご連絡をお願いいたします。