<忘年会シーズンに激増!急性アルコール中毒にご注意>
<忘年会シーズンに激増!急性アルコール中毒にご注意>
急性アルコール中毒の予防のために
CureApp宋医師が安全な飲酒について解説
年末が近づいてまいりました。今年もあとわずかとなり、クリスマスや忘年会など楽しいイベントが増える季節です。職場の同僚や友人と集まり、1年を振り返るこの時期、ついついお酒を楽しむ機会が多くなるかもしれません。しかし、この時期に特に気を付けていただきたいのが、急性アルコール中毒です。東京消防庁のデータによると、年末に向けて宴会が多くなるこの時期が、1年で最も急性アルコール中毒によって救急搬送される人が多くなっています※1。
そこで、今回は株式会社CureAppで減酒治療アプリの開発を担当する宋医師が急性アルコール中毒とその予防、対策について解説致します。
東京で毎年1万人以上が救急搬送される疾患:急性アルコール中毒
通常アルコールを摂取すると「ほろ酔い」と呼ばれるリラックスした状態を経て、まっすぐ歩けず千鳥足になる「深酔い」となります。しかし、急激に血中のアルコール濃度が高まると肝臓でのアルコール代謝が追いつかず、一気に泥酔状態になります。さらに、血中アルコール濃度が0.4%を超えると生命に危険が生じる「昏睡」状態となり、意識レベルの低下や嘔吐、血圧低下、呼吸数の低下がおこります。嘔吐した際に吐物による窒息が原因で死亡することもあります※2。
東京では毎年1万人以上が救急搬送され、その人数は年々増加しておりコロナ禍前の令和元年には18,000人を超える人が救急搬送されました。その後は、コロナ禍で宴会の機会が減ったため減少傾向にありましたが、2023年にコロナが5類感染症に移行した後再び増加に転じ、今年度もさらなる増加が予想されます。年末は特に急性アルコール中毒で搬送される人が増える時期です(図1参照)※1。年末年始のお休み中も、アルコール関連の交通事故、救急医療機関への搬送、そして死亡率が増加することが様々な国、地域において複数の研究で確認されております。この時期は特にアルコールに関する問題の予防のために啓発が必要な時期だと考えています。
急性アルコール中毒になりやすい人とは
東京消防庁のデータによると、急性アルコール中毒で搬送される人のうちとりわけ女性の割合が増えてきています(図2参照)※1。女性は男性に比べて、アルコールを分解する力が弱く、アルコールの影響を受けやすいことが分かっており、よりリスクが高いといえます。
また、搬送者のうち20代以下が半数を占めていることも特徴的です(図3参照)※1。若い人は飲酒経験が少なく、どの位の量を飲めるのか適切な量やペースが把握できていないケースが多く注意が必要です。
急性アルコール中毒の予防のために
飲酒により意識を失うと、事故や対人関係のトラブルにも繋がり、様々なリスクがあります。最悪の場合は命を失ってしまうことも念頭におき、自分や周りの人を大切にした飲み方に留意するようにしてください。安全な飲酒のための対策を以下にいくつかあげます。
・無理に飲まない、飲ませない
・一気飲みや短時間での大量摂取を避ける
・こまめに水を飲みながらお酒を楽しむ
・体調が悪い時や疲れている時は、お酒を控える
・周りに具合の悪い人がいたら、すぐに横にして(吐物での窒息を防ぐため)安静を保ち、酔いが覚めるまで付き添う。つねったり叩いたりしても反応がなく、意識がない場合はすぐに救急車を呼ぶ。
まずは「減酒」から
アルコールを分解する酵素の働きは個人差が大きいことが分かっており、この量であれば急性アルコール中毒にならないと断言することはできません。しかしながら、厚生労働省の指針によると純アルコール量60g/日の飲酒は多量飲酒と位置づけられており、急性アルコール中毒、交通事故や転倒による外傷などが起こりやすい量とされており避けるべきです。純アルコール量60gとは、アルコール度数5%の缶ビール500mlで3本程度、同15%の日本酒で3合程度です。
またアルコールは急性アルコール中毒だけではなく、がん、肝障害、高血圧など様々な身体疾患の原因になることが分かっています。飲酒する前にあらかじめ飲む量を決めるなど、日頃から飲酒量が増えないように気を付け、一杯でも「減酒」することが必要です。
ご自身で飲酒量がコントロールできない状態はアルコール依存症が疑われます。そのような場合、専門的な治療が必要になる場合がありますので、早めに医療機関に相談することが大切です。
※1:東京消防庁HP https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kyuukanka/katudojitai/data/pdf/R5_7-14.pdf
※2:e-ヘルスネット 急性アルコール中毒https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-001.html
<解説>
宋 龍平
株式会社CureApp / 岡山県精神科医療センター 医師
東京医科歯科大学 精神行動医科学 非常勤講師
京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康増進・行動学分野 研究協力員
長年、アルコール依存症に精神科医として向き合う中で、早期治療普及の重要性を痛感し、CureAppで減酒治療アプリプロジェクトを立ち上げた。最前線の診療現場に立ちながら、研究にも精力的に取り組み、日本アルコール・アディクション医学会を始め、複数の学会で受賞歴がある。
研究実績はこちら https://researchmap.jp/rso。
※取材をご希望の際はCureApp広報までご連絡をお願いいたします。