寒い日のお風呂に潜むヒートショックにご注意を!
寒い日のお風呂に潜むヒートショックにご注意を!
高血圧の方にオススメするお風呂の楽しみ方
交通事故死の2倍!?お風呂に潜む危険
急な気温の変化によって血圧が大きく上下し、心臓や血管に負担がかかることで起きるヒートショック。暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室、さらに熱い浴槽へと入浴の際に体感する急激な温度変化は大きな血圧変動をもたらし、意識障害をひきおこすなど、浴室内での死亡事故の一因と考えられています。令和3年人口動態調査(厚生労働省)によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水による死亡者数は年間4,750人で、交通事故死亡者数2,150人のおおよそ2倍です*³。これまで日本の建築では、浴室やトイレの温度管理について見落とされがちでした*⁴。住宅によっては11月から4月の寒い時期、特に高血圧の方は、このヒートショックに充分な注意が必要です。高血圧の方が入浴時に気を付けること
食後すぐの入浴、入浴前後の飲酒は避けましょう高血圧の方や高齢の方は、食後に血圧が下がる食後低血圧を起こしやすいため、食後すぐ、また、睡眠薬などを服用した後も入浴は控えましょう。
飲酒後は血管が拡張し、血圧が下がりやすくなります。アルコールの影響と入浴の影響で急激な血圧低下をきたすこともあるため、注意が必要です*⁵。この他、体調が優れない時も決して無理をして入浴しないようにしましょう。
入浴前に脱衣所や浴室を暖めておきましょう
脱衣所や浴室を事前にあたためてリビングなどの居室との温度差をなくすよう工夫しましょう。
十分な水分補給をしましょう
発汗による脱水症状や熱中症を防ぐために、入浴の前後には水分補給をし、脱水にも気を付けましょう。
同居する人に声をかけてから入浴しましょう
同居者がいる場合は、入浴時には必ず同居者に一声かけてから入るようにしましょう。また、同居者側も、声かけや見守りを意識するようにしましょう。一見些細なような心がけですが、体調不良や万が一の事故等の際に、早く発見することができるため、大変重要です。
ぬるめのお湯に10分以内
熱い風呂や、長風呂をすることも心臓に負担をかけます。お風呂の温度は40度程度に設定し、10分までを目安に、長風呂は避けましょう。
浴槽から急に立ち上がらない
入浴後は血圧が下がりやすくなっているため、急に立ち上がったりするとめまい等が起こることがあります。また、高血圧のために降圧剤を内服していると、血圧が下がりすぎてしまうことも。血圧が下がることで脳へ血液が十分に行き届かないことによって意識消失を起こし、転倒する危険性も高まります。これを予防するため、立ち上がる際には必ず手すりや浴槽のへり等につかまり、ゆっくり立ち上がるようにしましょう。
安全にお風呂を楽しみましょう
日本を代表する文化の一つともいえるお風呂。お好きな方も多いでしょう。お風呂の効果として、体を清潔にすることのほか、日々の疲れを癒してくれる、疲労回復なども挙げられます*⁶。入浴は高血圧の要因のストレスへの対策としても有効です。ヒートショックの予防を心がけて安全にお楽しみください。政府広報オンラインでは、もしお風呂で倒れた人を発見した場合の対応方法などを紹介しています。落ち着いて対処できるよう、ご家族と一緒に読んでおくことをお勧めします。
政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.html
*¹急な温度変化に伴う血圧の変動により血管に負担をかけることで起こる健康被害。心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、特に寒い時期(11月~4月)は注意が必要です(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_067/assets/consumer_safety_cms205_221227_02.pdf)
*²https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26657048/
*³資料:消費者庁「無理せず対策 高齢者の不慮の事故」(令和4年12月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_067/assets/consumer_safety_cms205_221227_05.pdf
*⁴https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323205.pdf
*⁵Fujiwara T. Difference in evening home blood pressure between before dinner and at bedtime in Japanese elderly hypertensive patients. J Clin Hypertens. 2017 Jul;19(7):731-739.Difference in evening home blood pressure between before dinner and at bedtime in Japanese elderly hypertensive patients - PMC (nih.gov)
*⁶https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningenseikatsukogaku/16/2/16_51/_pdf
【監修医師】
有馬 久富(ありま ひさとみ)先生福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 主任教授
1993年九州大学医学部卒業。九州大学第二内科へ入局し、久山町研究に従事。
シドニー大学ジョージ国際保健研究所客員研究員、九州大学環境医学分野助教を経て、2008年より再びシドニー大学ジョージ国際保健研究所で講師として2年間、准教授として3年間大規模臨床試験に従事。
2014年より2年間、滋賀医科大学アジア疫学研究センターで特任教授として疫学研究に従事後、2016年4月より現職。専門分野は、高血圧・脳卒中の疫学および臨床研究。
※有馬先生への取材をご希望の際はCureApp広報までご連絡をお願いいたします。